忍の里 その1
ここは人里離れた忍の里、深い森と険しい谷に囲まれているために並の人間では行き来するのも命懸けとなる。そこに四人の忍者と年をとった明らかに達人の臭いを漂わせる老骨の忍者が、毎日骨身を削る修業に明け暮れていた。

年老いた忍者の名は「玄楼斎」といい、若い忍者達にひととおりの修業を受けさせ、一人前にしていくという役目を負っていたが、同時に使い物にならないと判断された忍者は、状況に応じて口封じのために抹消するという過酷な役割も同時に担っていた。そのため、手塩にかけて育てたかわいい教え子をみずからの手で、或いは、みずからの命令で再起不能にしなければならない事も度々あった。

そんな苦い思い出も今日の嬉しい知らせのおかげで忘れることが出来そうだ。今朝方早く、彼らを召し抱えている松島藩の重役から、「火急にして緊密なる用につき、至急下忍の一人を夜半に拙宅まで参らせよ。」という密文が届いたのだ。

玄楼斎は彼なりに年老いて錆びた頭を凝らして考えた。ようやく自分の弟子が御上の目に止まる時が来たのだ、ここは是非とも四人の中で一番出来の良いものを行かせたい。しかし四人の技能はそれぞれ一長一短、おいそれと決められるものではない。それでもやがて・・・

「決めた、仁之助に行かせよう。奴は頭が切れる。都会に出たときこそ奴の才能は発揮されるだろう。」 まさに鶴の一声だった。この決定に仁之助本人はおいといても、残り三人の動揺は隠せない。

真名鶴「お爺様は何をお考えなのだ!?よりによって仁之助とは!」
弥彦「しかたないではないか、我々はお爺様の言う通りに従うべきなのだから、不満を漏らしてはいかん。」
真名鶴「お前は悔しくないのか?仁之助のどこに我々より優る物がある?我々のどこがいけないのだ!?」

三人のなかでも最も大人びた雰囲気を醸しだしていた真名鶴であったが、初めて利害の対立が起きた今回は、他の二人を驚かせる程の狼狽、怒り心頭ぶりだった。普段の冷静さを臭わせるキリっと端正に整った顔つきも、憤怒に堪える鋭く尖った表情になっている。

涼香「真名鶴は私たちの中では確かに忍としての力量は高いと思うよ、だけどお爺様はきっとその点だけで決めているわけではないと思うの。私たちの思慮が及ぶところではないのよ、ああ見えても何十年と生きているんですからね。」

まさにああ見えたままなのだが、涼香は虫も殺せないような朗らかな笑顔でスッパリと言った。しかし真名鶴の気持ちは収まらない。

真名鶴「そうじゃない、単にお爺様が見誤られてるだけだ!私は仁之助が今回の御用を果たせるとは到底思えない!」
弥彦「いいかげんにしろよ真名鶴、お前はただ仁之助が選ばれたから嫉んでいるだけじゃないか。仁之助の力量が足りる足りないは関係ないだろ!お前は結局自分が選ばれなかった事だけが気に入らないんだ!」

真名鶴は弥彦に心中を見透かされたおかえしとばかり、立ち上がると同時にあぐらをかいていた弥彦を後へ蹴飛ばした。そしてそのまま四人が寝泊まりしている小さな小屋から飛び出して行った。

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