お嬢様のぬいぐるみ その4
翌日、僕は雪江の部屋の部屋には近づかなかった。
もし、昨日のことがバレでもしたら、クビはもちろん、人間として一生の恥を晒すことにもなる。
また、それ以上に僕はあの娘に対する恐怖感も、少しはあったことを告白しておく。
自分の動きがまったく封じられ、射精という、誰かに見られるということは実際にはあまりない事を強制された。僕の意志とは関係なく、僕の身体は・・・。

香田さんに叱られたが、お嬢様雪江の部屋の側の仕事でも、適当にうっちゃらかし、早々に引き上げた。

その次の日も、その次の日も、雪江の部屋は徹底的に敬遠した。
「どうしたの?お嬢様と喧嘩でもしたの?」
香田さんがさすがに不審に思い聞いてきた。
「え?ええ、まあ。」
「それは困るわ。せっかくお嬢様にもお友達ができたと思ったのに・・・よし!私が間に入って仲直りさせてあげるわね。」

それはこまる!わざと避けているのに!
「い、いえ! もういいんです。大丈夫ですから、そのうち仲直りしますよ!」
などと適当な事を言って、山盛りの洗濯物を抱えて早歩きでその場を去った。

なんとも人を避けるとは気分のいいものではない。僕は気をまぎらわすため、給与明細に目を通した。 「この勢いでいけば、夏までに結構なお金になるぞ。そうしたら、別な仕事に就こう。この屋敷ともおさらばしよう。」
僕にちょっとした目標ができた。期間を限定することで、特定の人を避けて仕事をするという、居心地の悪い職場から解放される望みができたのだ。

「武史君。ちょっと休み時間中だけどいいかな?」

香田さんがガッツポーズをとる僕を呼んだ。
「2階にある布団の部屋へ行って、お客様ように何枚か出しておいてほしいの。」
「はい、わかりました。」

屋敷は西洋風だが、何部屋か和風の部屋も用意されている。主に来客用に使われる。僕はその布団のつまった押し入れのような部屋に向かった。
中は真っ暗でホコリの臭いが立ち篭める。ドアを開けっぱなしにして、廊下の明かりをたよりに、指定された大きな布団をひきずりおろそうとした。


バタン!

「・・・・・・・・・・・・あ。」
ドアは勝手に閉まるはずはなく、だれかが閉めたのだ。そして閉めたのは、ドアノブを背中にまわした手で握り締め、うつむいてこちらを睨んでいる雪江だった。

・・・・ゴクリ。

「香田がね、私達のためにセッティングしてくれたの・・・。」
「こ・・・香田さんが!?」
うわ!やめろっていったのに!なんて余計なお世話なんだろう!!

「・・・・どうして? 私の事、避けてたでしょ?」
窓の外には雨戸があり、ほんのわずかな隙間から、外の明かりをうっすらと入れた。
「い・・・いや、そんなことはないよ。僕の仕事は決まっているんだ、君と遊ぶことは仕事じゃない。 そんなに暇じゃないんだ。」
少し冷たく言い放ち、必要な分の布団をまとめ終えた。

バサ!

僕は後ろから強い力でなぎ倒され、仰向けでふいかふかの布団に埋もれた。すぐさまなぎ倒した本人は僕の身体の上に馬乗りになり、僕の両手を掴んだ。
パジャマの若干の白い光沢が、隙間から漏れた光に反射した。


「なにすんだ!?はなせ!!」
こないだの事もある、この娘の好きにはされたくない。しかし・・・

ガチャリ。

「こ、このー!いいかげんにしろよ!俺はお前の人形やぬいぐるみじゃねえんだぞ!」
再び手首に感じた冷たい金属の感触に、さすがの僕も怒りが込み上げた。

手錠をされながらも、雪江の身体をどかそうと、腕を振り回し、足を振り上げ、できる限りに暴れてやった。
ふと、彼女の姿がわずかな光からも消えてしまった。
「ん・・・・・・。」
僕は身体を起こし、布団の上に座る体勢になって、雪江がどこに消えたのか、あたりを見回していた。

「・・・・・・・・・・・・。
ガバ!!

ふいに、後ろから大きなバストの感触とともに、女の身体が抱きついてきた。
「!!」
僕の上半身を両手で抱きかかえ、素肌の見える長い太ももが、僕の腰を挟みこんだ。
「ゆ・・雪江!!おまえ・・・!!」
僕になにをする気なのか、声を出す間もなく、僕は雪江ごと再び布団に仰向けになった。今度は、耳もとで生暖かい吐息を吹き付ける雪江がいる点がさっきと違った。

「ゆ・・・雪江やめろよ!また、こんなこと!」
僕は手早く僕のチャックを下ろす雪江の手の動きに慌てながら怒鳴った。
「お前はおかしいよ!絶対!閉じ込められてる間に頭がおかしくなってんだよ!」
チャック、パンツの中からポロリと出され、あの狂喜の手のひらに再び抱かれる感触を感じ、雪江を罵倒した。
「聞いてるのか!?ナンとか言え! そしてやめ・・・・」
僕の声は霞んでしまった。雪江が僕の物を優しく愛撫し始めたからである。
「やめ・・・やめ・・・・」
壊れたレコードのようにくり返す僕。雪江はちゃんと、僕が言い切ろうとするタイミングで僕の一番敏感なところを器用に責めていた。
「やめ・・・・・・あ・・・・・・・」
やさしい愛撫、屈辱の愛撫、布団と女の柔らかさに文字どおり包まれた愛撫。もし雪江が食虫植物なら、僕の身体は今じっくりと包まれて溶かされているようだ。もう、何もできない。

抵抗することをやめ、ただ雪江に身を委ねている、捕らわれの虫けらに雪江は言った。
「今までよくも無視してくれましたね。」

その時、雪江の手の圧力と動きの早さが、猛烈に変わった。
「うわ・・ッ!!」
ヌチヌチヌチヌチ・・・
「私、ハッキリ言って寂しかったけど、それ以上に怒ってます。」
ヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチ・・・
「ア・・ア、ア・・・」
「許さない、ゆっくりとお返ししてあげる!」
ヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチヌチ・・・
「・・・・・・・・!!」

「ほら、武史はこうされるのがとっても好きだって、こないだ言ってたよね?」

僕は布団と女の形をした食虫植物に包まれた形で、布団部屋のホコリが立つ空間に勢い良く射精した。雪江は前とは違い、まだ脈を打って出している僕の物を、さらに搾り取ろうとしごいている。
僕は香田さんを呪いつつ、再び意識を失った。

僕はその後ぼんやりと一時的に意識を戻した。その時、僕は布団らしき物に包まれ、誰かに廊下をズリズリと引きずられていくような感じを受けた。
「・・・・どこへつれていかれるんだろう?」
一言、能の中で呟くと、再び意識を失った。
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