ロッカーブギウギ その1

((バタン!  最近はこの音しか聞かないな。))
((目の前が明るくなったり、暗くなったり。二進数のように交互に繰返されるだけだ。))

シュンイチは高校1年生。スポーツの経験は中学の時に一年だけ。
友だちは多くもなく少なくもない。人を笑わせるのが少しだけ得意。

((真っ暗な閉ざされた空間だけど、たまに外を通りすぎる女の子の笑い声や、廊下を遅刻ギリギリに滑り込むやかましい足音が、わりと退屈を和らげてくれる。・・・・あ、またテストの話に夢中な三人が通るぞ。))

シュンイチは最近ずっとこの縦長のロッカーの中で生活している。
もちろん好き好んでこんな狭い中に入っているわけではない。
ほんの2週間前の事・・・・・

「シュンイチ!君に貸したCD早く返せ!」
目上に揃った前髪、黒い艶やかな髪を振り乱して、うるさい小娘がエライ剣幕だ。

「は?すでに返してますけど。」

友だちとの雑談を邪魔され、少し冷めて返すシュンイチ。
そんな落ち着きぶりとは真逆に、ますます言葉を荒立てる、
「私は返して貰った覚えはないわ!さっさと返せこのドロボウ小僧!!」

その奔放ぶりに慣れきっている友人が一言。
「朝から雛乃(ひなの)は返してもらってないって、言ってるのよ。シュンイチ君、ちゃんと比奈乃に手渡したの?」
「亜里沙ありさ)ちゃん!それ大事だよ! 私は君から受け取った覚えはありませーん!!」
教室中に聞こえる音量で雛乃は訴えた。
雛乃は黒い髪に黒くて大きな瞳の騒々しい小動物系の女の子。亜里沙はそんな雛乃の母親役で、少し雛乃より背が高く、落ち着いた大人の雰囲気が特徴だ。

「だーかーらー、お前に渡そうと思ったけど、お前がロッカーの中にいれとけってあの時俺に言ったんじゃん。」
「ッグ・・あ・・あれは・・」
ジロリ。
冷たい目で友人を見おろす亜里沙。
思い出してみれば、確かに2日ほど前、女の子のグループ内で、雑誌に載った載らないで盛り上がってた時、雛乃が面倒くさそうにシュンイチに言っていた事を、二人は思い出した。
「よかったね雛乃、CDの場所がわかったじゃん。」
「ぬ・・・。」
きまり悪くふてくされる雛乃。

なんとも簡単に問題は解決した・・・・かに思えたが・・・・・。

「シュンイチィィィィィィ!! 嘘を付くでなぁい!」

昼飯の弁当を開き、中を覗いたシュンイチの頭を、ガッチリとロックする雛乃。
しきりに雛乃のヒジにタップしているシュンイチ。

「シュンイチ君。CD,雛乃のロッカーにないよ。」
冷静な口調で紗理奈が言った。
「シュンイチィィィ!!私のロッカーに私のCDなんて無い無い無いぞー!!」
同じことを雛乃が吠えた。

「イテテテ・・! し、しるかよ!確かに俺はいれたぞ!よく探せよ!」
「ホントに無いよ。中の物も全部出して、ついでに大掃除できるくらい探したけど。」
「返せー!!! この恩知らずドロボウ小僧ー!!!!」
さらにきわどく雛乃のヘッドロックが締まる。完璧に決まっていて抜け出せない。
あやうくギブアップを訴えるところで、品のある格調高い声が聞こえた。

「話は聞こえましたよ!お困りのようですねぇ!」
そこへ割って学級委員長の山野井 静香(やまのい しずか)が現れた。
「あ、委員長!いいところへ!」
静香は、このクラスに起こるのトラブルには必ず現われ、自分が仕切って解決することが生き甲斐の女だ。
「おい、委員長!男子をヘッドロックにかける女子に何か罰を考えてくれ!」
雛乃の細く、力強い腕の中から上訴した。
「ずばり、今回の問題は、雛乃さんのCDが紛失した・・・否、盗まれた、って所ですわね。」
シュンイチの上訴を無視して、盗まれた事を強調した。

「えー!!! 私のCDって盗まれたの????」
「この場合そう見るのが自然ね。ちゃんとロッカーには鍵をかけときなさい。」
紗理奈が忠告した。

「そんなー! マジお気に入りのCDだったにのにー!! 許せないー!!!」
立った姿勢から、地面に倒れ込んで、シュンイチの頭をより強く締めた。シュンイチの頬で雛乃のふっくらした胸が潰れる。
「悲しいことですが仕方ありませんわ・・・雛乃さん、あきらめなさい。」
静香は尖った瞳を無念そうに閉じ、眼鏡を指でクイっと持ち上げた。
「いやだ!あきらめ切れるもんですか!シュンイチ!あんたが悪いのよ!!」

再びシュンイチの身の上に火の粉が降ってきた。
「なんで俺が!?」
「だまれ!!アンタさえちゃんと私に返していればよかったのよ!!」
「だからそれはさっき言っ、ぶぐ・・・・・・」
シュンイチは雛乃の胸で口を封じられた。
「雛乃はシュンイチ君が責任を取らないと腹の虫が収まらないと言ってるわ。」
亜里沙は静かに通訳した。
((なぬ? 俺が悪いんじゃないのにー!))
「そうなの?まあ気持ちは解りますよ。返した、取られた、では到底納得いかないでしょうね。」
委員長が話に決着をつけはじめた。
((でも!でも!俺は悪くないと思うよ!??))
「シュンイチ君。ここは雛乃さんの気持ちを汲んであげなさい。そうすれば万事解決ですわ。」
「しょうがないわね、シュンイチ君そのまま締め殺されるよりはマシでしょ? それで、雛乃。 どうしてほしいわけ?」
紗理奈にうながされても、雛乃はすぐには納得いく案を思いつかない。
((マテー!俺の反論はー!))
「あの・・・こうしたらどうでしょう?」
今度は新しい声が聞こえた。一部始終を聞いていたクラスの他の女子だ。
「今回のような事がないように、シュンイチ君が責任を負って、ロッカーの見張り番になってもらうってのは・・・?」
((!!))
突拍子もない発案に、ざわついていたが、やがてギャラリーを含め、本人も納得し始めた。
「ああ!それいい!! まさに今回の君の落ち度を反省してます、って感じでグーじゃん!?」
((何、勝手なこといってんだ!))
「そうね、なんだか納得しますわ。雛乃さんもいいと言ってますし、これ以上はないんじゃないかしら?」
「だってさ、シュンイチ君。雛乃のロッカーを頼むね。」

「決まった!それじゃあ今日からさっそく働いて貰うよー?」
雛乃は少し腕をずらし、シュンイチの頚動脈を締めた。
((・・・・・・・・・・


「さて、私のロッカー入れてこよっ」
「うらやましいですわ、雛乃さん。なんだか専用の大きなおもちゃが出来たみたいね」
「私も手伝うよ、雛乃。」

軽い談笑の後、シュンイチはクラスの女子の手で雛乃のロッカーに納められた。

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